機内サービスは1時間前に終わっていたけれど、片付けと報告書を終えたのは、着陸から40分後だった。
香月 結(こうづき ゆい)、26歳。
国際線の客室乗務員。
飛行機ではあんなに“ていねいなごはん”をサーブするのに、自分が一番食べるのは、レンジで温める白米と味噌汁だ。
でも結には、ちょっとした“魔法”がある。
それが、炭七味。
京都麻の葉の缶入り。
見た目は地味。
でも、中身が違う。
ごはんにふりかけると、まずピリッと赤唐辛子が舌に触れ、噛むほどに麻の実と黒胡麻の香ばしさが広がる。
そこに柚子の皮の苦味と、山椒の清涼感が重なる。
結は言う。
「機内食に近い味に飽きてるから、強すぎない辛みがありがたい」
「味が重なっていく感じが、眠ってた舌を起こすの」
最初のひと口は、ごはんだけ。
二口目から、唐揚げや卵焼きをのせてみる。
すると急に、“ふつうの夜ごはん”が“ちゃんとした一品”になる。
それが炭七味の力だった。
炭のような焦がしの風味が、どんなおかずにも「手をかけた感じ」を足してくれる。
たとえコンビニごはんでも。
たとえ電子レンジでも。
「味を盛るって、こういうことかも」
芽衣はそう言って、もうひと口。
フライトでバランスが狂った味覚が、炭七味で“着地”していくのを感じていた。
味覚も、気持ちも。“帰ってきた”を教えてくれる一振り。
→ 炭七味を見る
▼ 客室乗務員、香月 結の「京都麻の葉 物語帖」
→ 檜精油 × 客室乗務員|この香りで、オンとオフの境界線を引いている
→ 麻炭お香 × 客室乗務員|“香りのない香り”を、海の向こうへ届けたくて